男性特有の前立腺異常による尿漏れは放置しないで専門医へ相談

尿漏れの中でも男性だけにおこる尿漏れの原因が前立腺に関係するものです。

前立腺は男性だけにある臓器ですので、前立腺が肥大する「前立腺肥大症」や「前立腺がん」による排尿トラブルについて男性であれば誰でも正しく理解しておく必要があります。

というのは、排尿トラブルの要因の1つである「前立腺肥大」は加齢とともに罹患率(病気になる確率)が高くなり、日本人男性の平均寿命である80歳時では実に90%にものぼるからです。

つまり、尿漏れなどの排尿トラブルは遅かれ早かれ日本人男性の9割が経験する身近な問題なのです。

前立腺肥大は早ければ30代で発症する方もいますから、尿漏れの症状がでても慌てないように尿漏れの原因や対策を知っておきましょう。

1.すべての男性に起こり得る「前立腺肥大」は「過活動膀胱」の引き金になります
2.前立腺異常のサインかも知れません「尿漏れ」したら専門医へ
3.前立腺が原因の尿漏れの予防トレーニング
4.前立腺に起因する尿漏れがあっても生活の質を落とさない食事・運動・排尿後ケア

1.すべての男性に起こり得る「前立腺肥大」は「過活動膀胱」の引き金になります

前立腺は男性だけにある臓器で、加齢とともに前立腺肥大のリスクが高まります。
この前立腺が肥大する原因は現代の医学ではまだ原因が解明されていません。

前立腺肥大症が原因の尿漏れ

前立腺は膀胱の出口あたりにあり、この前立腺が肥大し大きくなると尿道を圧迫してしまい、尿が出づらい(尿閉)、尿が出きらない(残尿感)、排尿の回数が多い(頻尿)、就寝中にトイレにいきたくなる(夜間頻尿)、尿意を感じてから排尿を我慢できない(尿意切迫)などの様々な排尿障害が起き、尿漏れにつながることがあります。

過活動膀胱(かかつどうぼうこう)が原因の尿漏れ

前立腺肥大が起こると排尿がしづらくなります。
尿が膀胱に溜まっているのに尿が出ない状態が続くと、膀胱は排尿をしようとしてしまい、脳の指令がうまく伝わらなくなってしまいます。
これが「過活動膀胱」という状態です。

切迫性尿失禁が原因の尿漏れ

過活動膀胱の状態になると、自分の意思とは関係なく膀胱が収縮して排尿しようとしてしまいます。これが切迫性尿失禁(せっぱくせいにょうしっきん)です。

症状としては、急にトイレに行きたくなったり、トイレに行く回数が増えたり、我慢できずに尿漏れしてしまうことがあげられます。

溢流性尿失禁が原因の尿漏れ

切迫性尿失禁から更に症状が悪化すると、尿道がふさがってしまい自分の意思で尿を出したい時に出せない「溢流性尿失禁(いつりゅうせいにょうしっきん)」になる可能性があります。
溢流性尿失禁になると排尿が出来ない為に膀胱は膨らみ、溢流性(あふれ流れる)という名の通り、尿が少しずつ漏れ出すという症状が出てきます。

腎不全

溢流性尿失禁になると、老廃物が排尿とともに体外に排出できなくなり、腎臓へのダメージから腎不全などのリスクが高まります。

誰にでも起こりうる前立腺肥大症での尿漏れは、直接命に関わることはありませんが、そのまま何も対処や改善をしないと最終的には腎不全になる可能性も考えらない訳ではありません。

2.前立腺異常のサインかも知れません「尿漏れ」したら専門医へ

尿漏れはやっかいな症状ですが直接死に至る事はありません。
むしろ、そういったリスクが発生する前の段階で教えてくれるサインだと考えると良いでしょう。

尿が出づらく1回の排尿量が200mL以下(尿閉)
排尿に1分以上時間がかかる
尿が出きらない(残尿感)
排尿の回数が1日に8回以上(頻尿)
就寝中にトイレにいきたくなる(夜間頻尿)
尿意を感じてから排尿を我慢できない(尿意切迫)
などの自覚症状があった場合は要注意です。

泌尿器科へ行くことに抵抗がある方も多いとおもいますが、男性では50歳代で30%、60歳代で60%、80歳代では90%の方が前立腺肥大の症状があり、誰にでも起こる自然なことですから決して恥ずかしがる事はありません。

そして泌尿器科の専門医や医療スタッフは専門家ですから、安心してご自分の症状をご相談いただけます。

「何も問題が無いということを確認しに行く」という位の心構えで受診していただき「前立腺肥大症でも前立腺がんでも無い」という診断結果でしたら何も問題はありませんし、仮に前立腺肥大症や前立腺がんが見つかった場合も早期に発見することが出来て、悪化する前の段階で有効な治療が受けられるでしょう。

3.前立腺が原因の尿漏れの予防トレーニング

前立腺肥大の症状がある方の中でも、前立腺肥大「症」と名のつく処置が必要とされる割合は全体の25%程度で、処置の内容は薬物療法や行動療法、前立腺がんの場合は手術を伴う場合もあります。

治療後の尿漏れや、事前の予防に有効なトレーニングが「骨盤底筋トレーニング」です。

骨盤底筋トレーニング
1 床に仰向けに寝転がり足を肩幅くらいに開いて膝を立てます。
2 その状態で肛門と尿道のあたりをキュッと力を入れるように引き締めます。
3 そのまま5秒キープします。キープできたらリラックスした状態に戻します。
4 50秒ほどリラックスした状態をキープします。

この2~4を1セットとし、最初は5セットから、慣れてきたら徐々に回数を増やしていきましょう。

このトレーニングにより骨盤底筋を鍛えることが出来るので、尿意を催してからトイレで排尿するまでの間の「切迫性尿失禁」による尿漏れを予防することが出来るようになります。

筋肉トレーニングですので、毎日続けることが大切です。個人差はありますが、効果が実感できるまでにおよそ3ヶ月程度のトレーニングが必要です。

4.前立腺に起因する尿漏れがあっても生活の質を落とさない食事・運動・排尿後ケア

前立腺肥大などが原因の尿漏れがある場合に、日常の生活の中で気をつけたい事があります。

温かい飲み物で水分補給

水分を摂らないと排尿も出来ません。ですが、体を冷やすと尿の回数も増えますので温かい飲み物で水分補給をしましょう。

良く噛んでバランスの良い食事

1日3食のバランスのよい食事を心がけましょう。
積極的に野菜・海藻を摂取し、油と塩は控えめに。

血流を良くする適度な運動

ウォーキングなどの30分以上続く運動を行い、外出が難しいときは屈伸運動をして心臓からの血流をサポートしてあげましょう。

排尿後にミルキングで残尿の排出

排尿後に尿道に残ってしまった残尿を、尿道を下から指で直接押して尿をしぼり出すことが出来ます。これをミルキングといい、物理的に尿を押し出して排出してしまうので、ズボンを上げたあとにチョロチョロ出てくる排尿後尿滴下による尿漏れを防ぐことが出来ます。

肥満は前立腺肥大に影響することがわかってきていますので、骨盤底筋トレーニングに加えてバランス良い食事と適度な運動は毎日続けましょう。

前立腺肥大は男性なら誰にでも訪れるもので、尿漏れを伴うことが多々ありますが、適切に生活改善やトレーニングを行うことにより尿漏れに対処することが出来るようになります。

尿漏れにより生活の質を落とさないように、尿漏れの自覚症状があったら専門医へ相談にいきましょう。尿漏れで大事に至ることはありませんが、そのまま放置しておくと段階を踏んで徐々に悪化する可能性があります。

尿漏れは誰にでも起こることです。決して恥ずかしいことではありません。